TOP > 大会・研究会等 > 国際図書館学セミナー > 2004年度 / Last update: 2005.1.14

第3回国際図書館学セミナー報告

渡辺信一(国際交流担当理事)


1.はじめに

 この国際セミナーは,去る2000年10月に締結した,日図研と上海市図書館学会との協定に基づいている。それ以前から文献資料や論文の交流プログラムは行われていたが,当セミナーは別途,実施されたものである。当研究会では川崎良孝事務局長が,上海側では呉建中上海図書館長が,それぞれ中心となって企画された。その目的は,図書館・情報学についての諸側面について相互理解を深めることにあり,3年間をひとつの周期として,そのうち,おのおのが1回ずつ研究発表者を派遣する。開催時期は,例年,10月中旬に設定され,今年は中国・上海での開催となった。

 今回の特徴は,上海側にとって第2回の国際図書館フォーラムの開催年にあたり,当国際図書館学セミナーは“第3回”ということで,同フォーラムに合流という新しい形態での実施であった。そのようなこともあって,日本側だけで10名以上もの発表者があり,しかも多くは若手の図書館員であり研究者という,きわめて活気を呼び込む結果となった。参加料の件も含めて川崎事務局長による寄与も特筆すべく,半ば同氏の努力によって成功がもたらされたものといえよう。なお,フォーラムに関して中国外からの参加は,アメリカ,オーストラリア,ニュージーランドも含む16ヵ国,70名余に及んだ。

2.セミナーでの発表と報告

 セミナーのプログラムとしては,10月14日に行われた第1分科会「図書館と生涯教育」では,高島涼子氏:高齢者生涯教育における図書館の役割をはじめとして,金智鉉,前田稔,櫻井待子,高鍬裕樹,Nancy Lee,潘華棟,張鼎鐘,林鶴,金紅亜,周慧林の各氏が,それぞれ個人発表を,また山口源治郎,木下みゆき,鮑延明,劉暁丹の各氏がシンポジウムのパネリストとして,それぞれ発表をおこなった。また前日には,国際図書館フォーラムのプログラムとして,IFLA次期会長のAlex Byrne博士をはじめ,川崎良孝事務局長などの基調講演があり,第2分科会「レファレンス・サービスと研究」では,中野潔氏,第3分科会「電子図書館と電子都市」では,V. Raghavan氏が,第4分科会「図書館と都市の知識基盤」では,薬師院はるみ,古賀崇の両氏による発表が行われた。
 詳細は,誌面の都合で省略するが,当日配布のProceedings of the Second Shanghai International Library Forum  Oct. 12‐15, 2004 Shanghai, China 545p. および大会プログラム Final Program & Information  12p. さらには当日の配布資料(主として英文,545ページ),そして全文収録ではないが,下記をご参照いただければと思う。(当日配布資料は当方で1部を保存しています。ご覧になりたい方は,事務局までお知らせください。)

3.上海での国際交流など

 今回は,前回の2001年のような塩見昇理事長以下,全員が統一した行動をとったわけではなかった。したがって,国際交流担当理事としての明確な役割を十分に果たしたとは言えないかもしれない。しかしながら,各人各様のスタイルで中国・上海を理解し,現地の人たちと友好の輪を広げることができたと確信している。

 3年ぶりの上海はひときわ活気を呈していた。また初日から呉建中館長や国際交流処の沈麗雲氏の熱烈な歓迎を受け,晩餐会をはじめ,大会参加者への提供品(中国のおみやげのみならず,雨天のための折り畳み傘まであって中国側の温かい配慮を痛感)に至るまで,(7年前のIFLA北京大会とは比較の対象外と思われるが)人々の心の豊かさ,経済力の充実ぶりをまざまざと感じさせたことであった。閉会式は,黄浦江の遊覧船上で美しい夜景を見ながら行われた。最終日の15日は,一日がかりで江南の水郷,錦渓に向かい楽しく過ごした。上海図書館前から全員観光バスに分乗,鮑延明,章騫の両氏が添乗の役を果たし,道中の時間を有効に過ごすことができたが,錦渓では鄙びた中国の良き自然と人々に接することによって会議の疲れを癒したのであった。

4.次回(第4回)について

 来年は,3年ぶりに日本で2回目の開催となる。今回のセミナーに見られるように,従来とは少し違った視点で次回は考えられるべきであろう。

 つまり,これまでのようなベテランの発表者に限定することなく,少なくとも第1日はより若手の研究発表を期待したい。またテーマもひとつに限定することなく(あるいは大きなメインテーマのもとにサブテーマをいくつか設定して),図書館・情報学の領域内のさまざまな分野での発表を考えたい。

 また発表者は,中国/日本をキーワードとしたうえで,関心のあるすべて国の人々に広く呼びかけたい。つまるところ,国際図書館学セミナーは,これからさらに発展していかなければならないからである。

プログラム(開催案内より)